対象:実際に効果がある働き方改革を推進したい方 
効果:成功事例から、働き方改革をどう進めていくか理解できます。

 前回、「道は開ける」D・カーネギー著の内容から、働き方改革に結び付く成功事例について〈仕事の悩みを半減させる方法〉をテーマにお話しました。今回は〈心の中から悩みを追い出すには〉についてです。

・忙しいところに身を置く。
 チャールズ・ケタリンダはゼネラル・モーターズの副会長だった人物ですが、以前は貧乏で納屋の一部を実験室に使用しなければならず、また、食料品を買うのに奥さんの給料を充てなければなりませんでした。先行きの不安から彼の奥さんは眠れないことがありましたが、ケタリンダ氏に悩みはありませんでした。彼は仕事のことで頭がいっぱいで、悩んだりする暇がなかったのです。
 忙しい状態に身を置くという単純なことで、なぜ不安を拭い去ることができるのでしょうか?それは、「人間は一度に一つのことしか思考できない」という心理学の基本的な法則のためです。例えば、自由の女神と明日の行動予定を同時に思い浮かべてみて下さい。一つ一つを交互に考えられても、二つ同時には考えられないかと思います。感情も同様です。浮き浮きして何かに夢中になっていながら、悩みのために意気消沈することは同時にできません。

 この単純な法則は、様々な奇跡を起こしてきました。
 ・大戦中の神経症治療に活用
  将兵たちが戦場での衝撃的な経験により神経症で戻ってくると、軍医たちは処方箋に
  「多忙にしておくこと」と書き込んだ。そして、球技、ゴルフ、写真撮影、園芸、
  ダンスなどの戸外活動をさせた。彼らには恐ろしい体験を思い出す時間が与えられな
  かった。
 ・作業療法として活用
  クェーカー教徒の療養所では、精神病の患者に亜麻をつぐむ療法を行っていた。
  軽い作業をやるほうが患者の状態は良かったのである。仕事が神経をほぐしてくれる
  のである。
 ・偉大な科学者パスツール
  図書室と実験室での心の安らぎについて語っている。図書室や実験室にいる人々の多
  くは、研究に没頭して悩む暇がない。研究者で神経衰弱になる人はほとんどいない。
 ・ジョージ・バーナード・ショー
  「みじめな気持ちになる秘訣は、
  自分が幸福であるか否かについて考える暇を持つことだ」
 ・ウィンストン・チャーチル
  対戦のさなか1日18時間の勤務を続けていたチャーチルは、責任の重大さに頭を痛
  めることはないかとの質問に対し、「私は忙しすぎる。悩んだりする暇がない」
  と答えた。

 人間はあまり忙しくないと心が真空に近い状態になりやすく、また、心理的な法則ですが、すごい勢いで空虚な心を満たそうとします。満たす題材は、多くは悩み、恐怖、憎悪、嫉妬、羨望などの感情によってです。なぜなら、これらの感情は原始時代そのままの力強いエネルギーによって動かされているからです。
 ・コロンビア大学教育学部のジェームス・L・マーセル教授
  「悩みは人間が活動しているときではなく、一日の仕事が終わったときに人間に
  取りつき、害をなすことがもっとも多い。そんなときは、やたら妄想がほとばし
  り、あらゆる種類のバカげた可能性を拾い上げ、取るに足らない失策を一つ一つ
  拡大して見せる。こんなことが続くと、心が焼きついてしまう。
  悩みに対する治療法は、何か建設的な仕事に没頭することだ」

〈私見〉
 一見、時間に余裕がある方が気持ち的に安定するように思えますが、むしろ忙しい方が安定するというのは意外なことのように受け取られたかもしれません。理由は、忙しい方が余計なことを考えなくて済む、ということですが、そこから「思考」がいかに人の営みに大きな影響を与えるかが伺えます。ぼんやりしている時に脳裏に浮かんでくるのは、大体ネガティブ思考だったりしますが、時にそのような思考がエスカレートし無用な苦痛を発生させ、人を追い詰めます。そこで、その様な思考を追い払うために活用するのが「人間は一度に一つのことしか思考できない」法則です。仕事に没頭していれば、過去の不快な出来事や将来の不安について考えないで済みます。
 働き方改革において心の安定も重要課題ですが、この法則は大いに役立つと考えます。仕事に没頭すれば質の高い商品・サービスを提供でき、しかも余計なことを考えないので作業を迅速に処理でき時短効果もあります。
 ただ、そうして仕事が早く終わり帰宅時間が早まるのは良いことですが、マーセル教授の「悩みは人間が活動しているときではなく、一日の仕事が終わったときに人間に取りつき、害をなすことがもっとも多い」という見解にあるように、空いた時間をぼんやりと過ごすのは精神衛生上良いことではありません。疲れている時などそのようなひと時も有効な場合がありますが、時間の過ごし方について考える必要があります。例えば、自己研鑽・趣味・家族団らんなど、やりたいこと・ワクワクすること・大切なことなどを基準に自分に合った使い方を見出すことは、ネガティブ思考を追い払うだけでなく、豊かな人生を送る上で大切だと考えます。