対象:実際に効果がある働き方改革を推進したい方 
効果:成功事例から、働き方改革をどう進めていくか理解できます。

 前回、「道は開ける」D・カーネギー著の内容から、働き方改革に結び付く成功事例について〈心の中から悩みを追い出すには〉をテーマにお話しました。今回は〈カブト虫に打ち倒されるな〉についてです。

・小事にこだわるには人生はあまりにも短い。
 私たちが人生の大きな災難に雄々しく立ち向かう例はめずらしくありませんが、一方で、ささいな出来事、いわば「気分をいらつかせるもの」を気に病みます。

 ・リチャード・イヴリン・バード提督
  バード提督は、北極・南極への飛行成功により米国において国民的英雄となった人物
  である。提督が極地の夜を閉ざす酷寒と漆黒の闇の中で発見したことは、部下たちは
  危険・障害・氷点下80度という寒気などの重大問題には平然と耐えたはが、「気分
  をいらつかせるもの」のために大騒ぎしていたということだ。例えば、ある隊員が、
  隣で寝ていた同僚が自分の寝場所に侵入したのではないかと疑い不仲な状態になった
  、食事において厳粛に28回噛む完全咀嚼主義者が見えるところにいると食事が喉を
  通らないという不満があった、などの出来事だ。提督は、「極地のキャンプでは、
  この種のささいなことが、教養ある人間を狂気の一歩手前まで駆り立てる力を持って
  いる」と語っている。
 ・ジョーゼフ・サバス判事
  4万件に上る不幸な結婚を調停した人物だが、「不幸な結婚生活の根底には、ささい
  なことがらが存在する」と断言している。
 ・ニューヨーク州地方検事フランク・S・ホーガン
  「世の中の傷心の半ばは、われわれの自尊心がちょっと攻撃を受けたり、侮辱された
  り、虚栄心がチクリと刺激されるために生じるのである」
 ・巨木の残骸の例え
  コロラド州ロングズ・ピークの山腹に一本の巨木の残骸がある。樹齢は400年。
  その木は長い生涯の間に14回も落雷に見舞われ、数えきれないほどの多くの雪崩や
  暴風雨が襲った。その木はひたすら生き抜いた。だが、最後はカブト虫の大群が押し
  寄せ、樹皮を破って侵入し徐々に生命力を破壊し、巨木を地上に倒してしまった。
  長い歳月、巨大な自然の驚異にも屈しなかった巨木が、人間の指でひねりつぶされて
  しまう小さい虫のために倒されてしまったのである。

 私たちはこの巨木に似ていないだろうか?まれに襲ってくる人生の嵐や、雪崩、雷鳴にはなんとか生き延びていくが、悩みという小さな虫によって心を食い破られていないだろうか?

・悩む者が心の安らぎを求めるならば、小事にこだわってはならない。
 小事にわずらわされないために必要なことは、つとめて力点を変えてみる、つまり、
 心の中に新しく愉快な視点をつくることです。

 ・ホーマー・クロイ(著述家)
  アパートで執筆に励むとき、いつも暖房装置の音に悩まされていた。ガーンとか、
  シューという蒸気の音がするたびに、机の前でイライラした気分になった。ある日、
  友人たちとキャンプに出かけた。薪が燃えさかりパチパチと音を立てるのを聞いて、
  暖房装置の音になんとよく似ているのだろうと思った。なのに、一方は愉快で、もう
  一方は不愉快なのはなぜだろう?それから、自分にこう言い聞かせた。「燃えさかる
  薪のパチパチという音は楽しかった。暖房装置の音だってよく似たものではないか。
  さあ、目をつぶろう、もうあんな音なんか気にしない」。その後、2,3日は暖房装
  置が気になったが、まもなく、すっかり忘れることができた。多くのささいな悩みに
  したって同じことだ。我々がそれを毛嫌いし、いら立つのも万事につけておおげさに
  受け取るからだ。
 ・ベンジャミン・ディズレーリ(元イギリス首相)
  「人生は短すぎる。小事にこだわってはいられない」
 ・アンドレ・モロワ(小説家)
  「この言葉は私の苦難に満ちた多くの試練に際して、いつでも心の支えとなった。
  私たちはしばしば、忘れてもかまわない小さなことのために、自分自身を台無しにす
  る。私たちがこの地球上に生きられるのは、わずか数十年にすぎない。それなのに、
  1年もすれば皆から忘れられてしまう不平不満を悩みながら、かけがえのない多くの
  時間を無駄にする。もう、ごめんだ。私たちの人生を価値ある活動、感覚、偉大な思
  想、真実の愛、永久の事業のために捧げよう。とにかく、小事にこだわるには人生は
  あまりにも短すぎる」

〈私見〉
 小事を手放すのは困難です。私たちは小さなことにいつまでも引きずられてしまいます。頭では分かります。「こんなこと何でもない事じゃないか」と理解はするのですが、感情が「不快だ!」と騒ぎ立て、鎮火してはまた燃え上がるを繰り返します。特に、悩み、恐怖、憎悪、嫉妬、羨望などの感情は強烈です。前回もお話しましたが、それらの感情は原始時代そのままの力強いエネルギーによって動かされているからです。小事を許せるなら、サバス判事やホーガン検事が証言しているようなことはほとんど起こらないはずです。小事を手放せるようになる、ということは、実はかなり凄いことだと言えます。
 では、小事を手放すようになるためには、どうすれば良いでしょうか?
 ・小事にこだわることが無益であることを何度も言い聞かせる
  ホーマー・クロイ、ベンジャミン・ディズレーリ、アンドレ・モロワが述べること
  を何度も自分に言い聞かせることです。私たちは、小事ではあるけど嫌なことがあ
  ると、怒りや嫌悪などの感情を生み出します。ただ、そこで、小事にこだわる無益
  さを思い起こし、「小事にこだわらない」と自分に言い聞かせるようにします。
  物事の捉え方は習慣です。一度や二度ではそのようにはできないかと思いますが、
  何度も思い起こすことでパターンを習慣化するようにします。
 ・人生の目標を持つ
  人生を賭けて実現すると決めた目標を持つことは、小事を手放すのに有効です。
  視野が大いなる目標にシフトするので、目標を持たない頃よりも小事を俯瞰できる
  ようになります。アンドレ・モロワの「私たちの人生を価値ある活動、感覚、偉大
  な思想、真実の愛、永久の事業のために捧げよう。とにかく、小事にこだわるには
  人生はあまりにも短すぎる」という言葉からも、小事にこだわらなくする上で人生
  の目標を持つことが大切だということが理解できます。
 ・人生は自分を進歩させるための旅
  小事にこだわらなくなることは、感情面でレベルが高いと言えます。そうやすやす
  とできることではありません。ですが、人生は、ある意味そのような感情を克服す
  る試練の場とも言えます。でなければ、ここまで感情を乱されるようなことは頻繁
  には起こらないはずです。そこで、「人生とは、感情の波をコントロールし小事を
  克服して、より立派な人間になるためのトレーニングルームでもある」と捉えるこ
  とで、小事を手放すことに前向きに取り組めるようになるかと思います。

 小事を手放すのは並大抵のことではありません。ですが、それができるようになったとき、その人物はかなりの成長を遂げたと言えます。例えそのようにできなくても、手放す方向に向かっていこうとするだけでも、なかなかできないことだと思います。また、日頃の仕事においても、この様に心掛けることは、ストレスに対する抵抗力の強化や仕事の質・能率向上などの効果が期待できます。